AMRの急速な普及を促進する5つの技術進歩
生産性の低下、サプライチェーンの遅延、労働者の確保と維持のための継続的な努力、これらすべてが自律型モバイルロボット(AMR)の市場での急速な採用に一役買っています。AMR産業はまだ黎明期であるにもかかわらず、あらゆる規模の倉庫、工場、施設では、製品をより早く市場に送り出すことから、人手による物品搬送よりも価値とやりがいのある仕事に労働者を配置することに至るまで、すでにそのメリットを認識しています。 このような利点から、自動車や電子機器製造から、サードパーティロジスティクス(3PL)や消費者向けパッケージ商品(CPG)まで、ますます困難なアプリケーションにAMRを導入する動きが続いています。
このような高度な新しいアプリケーションの課題に対応するため、AMRベンダーはロボットの性能と使いやすさを向上させるための技術革新を常に行っており、より多くのロボットが複雑な交通状況の中を効率的かつ安全に移動できることを可能にしています。
急速に変化する5つの技術は、AMRの進歩や展開を促進するものとして注目する価値があります。
1 人工知能は流行語を超え、よりスマートで安全なAMRを実現する
人工知能(AI)は、業界や用途によって定義がまちまちであり、依然として混乱した流行語です。しかし、AMRにとってこの技術は、高価で時間のかかるプログラミングなしには、これまで困難または不可能であったタスクを実行する方法を自ら学ぶことができる、より賢いロボットを意味します。 AIには膨大な計算能力が必要ですが、それはAMRの開発者にとってより利用しやすくなりつつあります。そのため、開発者はロボットを訓練して、より迅速に物体や状況を識別させることができるようになります。ロボットがその訓練の枠を超えて推測できるようになるまでにはしばらく時間がかかりますが、新世代のアルゴリズムにより、ロボットは経験したことからより効果的に学習し、新しい状況をより的確に察知して、知的な選択をすることができるようになります。
現在では、高度なAMRはAIを活用することで、より高い精度で対象物を識別して、混雑した施設でも安全に走行できるようにナビゲーション機能に伝えるといった機能を、より少ない消費電力で実現しています。 AIの性能の飛躍的な向上はまだ先ですが、AMRの自律的な行動(周囲で何が起きているかを本当には知らずにある地点から別の地点へと移動する方法)は、今後も改善し続けるでしょう。
2 2 5Gの登場 - しかし、誰もが望むほど早くはないかもしれない
現在のモバイルロボットはインフラをあまり必要としないため、企業はロボット1台から簡単に始めることができます。しかし、施設でロボットを追加するとすぐに、それらを接続・管理する方法が必要になります。今のところ、少なくとも、その方法はWi-Fiに依存しています。 残念ながら、ほとんどのWi-Fiインフラは、このレベルのデータを共有できるようには構築されていません。 5Gが広く普及すれば、その強力で堅牢なITインフラがAMRのゲームチェンジャーとなり、企業は何十台、何百台ものロボットを効率的に配置・管理できるようになるでしょう。5Gは、超高信頼性・超高速の広帯域通信を実現し、複数のロボットを配備して途切れることなく稼働させる安定性を提供してくれます。
2022年には、より多くの企業はWi-Fi接続から4Gに移行し、5Gが約束するさらに強固で堅牢なITインフラに向けた大きな飛躍を遂げるでしょう。4Gでも、従来のWi-Fiで提供されているものと比較して、施設ではデータ接続の向上、セキュリティの強化、そして全体的なサービスの質の向上が期待できます。企業が最終的に、さらに多くのデータをより迅速かつ正確に移動するために特別に構築された5G に移行するにつれて、AMRの性能も大きく飛躍し、施設内で採用する経路についてより速く、より正確に決定できるようになります。
3 相互運用性とソフトウェアの進化がフリート管理を支える
個々のロボットにとっては、センサー技術の向上と5Gなどの接続性の進歩が、AMRの計画アルゴリズムやソフトウェアにデータを送り込むのに役立ちます。このデータは、施設内を移動する際に非常に重要で、ロボットは周囲または上方からあらゆる物体を確認できるようになります。 AIを活用することで、高度なソフトウェアはロボットに実行すべきタスクやプログラムを指示し、経路計画や衝突回避を支援します。
つい最近までは、2~3台のAMRでも、それは高度なセットアップと見なされていました。AMRを大量に導入している施設では、単一の屋内物流システムでAMR群を調整・制御・管理する必要性が高まっています。 Webベースのインターフェースを通して、フリート管理ソフトウェアによって、AMRの運用効率を向上させ、異なるトップモジュール、フック、その他の付属品を備えたロボットを含め、それらロボットのプログラミングと制御を簡単に行えるようになります。 プログラミングの段階が終わると、システムはロボット群の優先順位を管理し、位置や使用可能性から、実施すべき作業に最も適したロボットを選択します。フリート管理ソフトウェアは、エンタープライズリソースプランニング(ERP)や倉庫管理システム(WMS)など、他のソフトウェアと統合することも可能です。
AMRが企業の業務に不可欠になるにつれ、相互運用性が新たなソフトウェアの進歩の原動力になっています。 AMRベンダーとユーザーは、ロボットブランド間の相互運用性を実現するためにチームを組んできています。MiRやAutoGuideなどが参加している「MassRobotics AMR相互運用性ワーキンググループ」は、「組織が複数ベンダーの自律型モバイルロボットを配備し、それらが同じ環境で連係し、倉庫や工場の自動化の期待をよりよく実現できるようにする」規格を策定中です。そのバージョン1.0が2021年5月18日にリリースされました。
4 自動化によって多くのデータが使用される中で重要なデータを守るサイバーセキュリティ
AMRを進化させる技術というと、サイバーセキュリティはすぐに思い浮かばないかもしれませんが、それも変わりつつあります。 AI、相互運用性、5Gワイヤレスネットワークによって企業データがより広範囲に利用されるようになる中、ロボットを導入している企業は、そのデータがどのようにアクセスされ、AMRベンダーがそのセキュリティを確保するために何をしているかに注意を払う必要があります。これは、最近脅威がより多く注目されている産業分野のサイバーセキュリティのトレンドに密接に関連しています。
コロニアル・パイプライン社のハッキング事件(2021年5月)は、産業界のサイバー攻撃がいかに破壊的であるかを示す顕著な例です。オートメーション業界では現在、攻撃が大幅に増加しているわけではありませんが、サプライチェーンに対する攻撃の件数と精巧さにおいて懸念される傾向には、細心の注意を払う価値があります。
サイバーフィジカルシステムは、セキュリティ業界と脅威行為者の双方にとって、ますます興味深いものとなってきています。攻撃の多くは依然として企業のITインフラを標的としていますが、運用技術(OT)機器に対する脅威が急速に拡大しています。組込み機器における新たなゼロデイ脆弱性が加速的に発見されており、その多くはまだパッチが適用されていません。
このような脅威状況の進化は、あらゆる規模の企業がサイバーセキュリティに関する取り組みを強化する必要があることを意味します。製品ライフサイクル全体にわたって多層防御を適用し、セキュリティのベストプラクティスを適用することが、安全な製品を作成するための基礎となります。このような流れの一貫として、AMRベンダーは、進化し続ける相互接続の世界で顧客を確実に保護するために、断固とした行動を取る必要があります。
5 AMRと他の自動化アプリケーションの境界線は曖昧になりつつある
AMRは、企業が生産性と競争力を高められるように、屋内ロジスティックスのあり方を変革します。つまり、インテグレーターやベンダーは施設管理者と密接に連携し、マテリアルハンドリングの進歩を新しい用途に活用できるよう支援しているということです。 原材料の製造工程への搬送や完成品の品質管理への搬送、あるいはゴミ出しなど、小可搬重量のアプリケーションはすでに世界中の施設で導入されていますが、有人フォークリフトやパレットリフターの代わりに、より大きな可搬重量を搬送できるAMRを求める声はさらに増えています。また、協働ロボットのアームを移動式のプラットフォームに搭載したモバイルマニピュレーターも進化しています。協働ロボットをある場所から別の場所に移動させてより幅広い作業を行わせ、自動化投資からより高い価値を得たいと考える企業が増えているからです。
企業は自動化のメリットを享受しながら、受入ドックから製造現場、倉庫、出荷に至るまで、新たな機会を見続けています。性能、セキュリティ、相互運用性の向上により、従来のシステムとAMRの境界はますます曖昧になっていくでしょう。
労働力、サプライチェーン、生産性に関する継続的な課題によって、手頃な価格で効率的な自動化技術に対する需要が増大する一方です。また、AMRはまだ若い業界ですが、このような技術の進歩やトレンドは、機能と市場での採用の両方における爆発的な成長の原動力となっています。